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C.Wニコル氏講演会

「森から未来を見る」

 日時: 平成19年8月24日 (金) 18:30〜20:30(開場18:00)

場所: リーデンローズ大ホール 福山市松浜町2-1-10

テーマ: 「森から未来を見る」

以下C.Wニコル氏講演会の講演録です。

 

 私の生まれ故郷はウエールズです。

少数民族のケルト出身です。

ウエールズは丘の広がる山国ですが、森は昔は帆船の材料やマキに 産業

革命後は燃料、炭鉱の支柱、鉄道の枕木等のため伐採され続け国土の僅

か5%しか残っていません。

私の生まれた隣の谷は、アファンの谷と呼ばれていました。

風のとおる森の谷間という意味がありましたが今ではボタ山と死の川で昔の

面影はありません。

私は自然に憧れ小さな英国を飛び出し冒険の旅に出ました。

北極探検、北極越冬隊に参加、犬そりの旅やカナダやアメリカにも行き、捕

鯨船にも乗りました。

14歳から空手を習い,ウエールズ初の有段者になり、45年前空手を習うため

日本に来ました。

納豆も刺身も酒も好きだが、汚い空気、騒音、多数の人間に疲れ果てたとき

空手の師匠が言った。「こいつを山に連れて行け」。

2年半、冬山や日本各地に行ったが、かっての敵国人の私に誰一人として

いやなことをしなかった。みんな親切でした。

びっくりすることも多かった。

この人の多い日本に熊がいる。イノシシがいる。

ウエールズでは熊は900年前に絶滅した。

ケルト人はイノシシが大好物と書物に書いてあったが400年前に絶滅した。

沢にはオオサンショウウオが、鎮守の森にはムササビがいる。

日本には豊かな森があるからみんな生き残っているのだと思いました。

27歳のとき、エチオピア国立公園の公園長にリクルートされました。

公園内の環境破壊者、山賊、密猟者と血を流して戦い自然を守った。

しかし、国立公園外は森の破壊が続いた。

「森がなくなれば水がなくなり、砂漠になる。

生きられなくなる」といくら説得しても受け入れられなかった。

これでは国は守れない。

やがて戦争と飢餓が人々を襲った。

私は失意の内に日本に帰りました。

日本は治安も良く天国のようでした。

山に入れば美味しい水があり、言論も移動も宗教も自由、北には流氷が南

に行けばサンゴ礁の海がある。

こんな素晴らしい国が世界のどこにあろうか。心の傷を癒すにはこの国しか

ないと思いました。

40歳のとき居所が欲しくなり黒姫に行きました。

そこには友人の谷川鴈さん、猟友がいる。

熊も鷹もいる。

昔の日本と今の日本が両立していた。

その頃より自然を大切にしてきた民族がおおきくに変わりはじめた。

大木が次々と切り倒された。

何故もっと森のお金をかけないのか、

金だけか。

絶望感におそわれはじめ、知床,白神各地で自然が破壊され、悲鳴の声に

全国各地に出かけました。

そんな時ウエールズから「アファンの森に日本の森を作って欲しい」との便り

がありました。

「ちょっとあのボタ山が森に?」行って驚きました。

石炭産業が没落した一番苦しい時に日本企業が進出し、工場を立て、人々

に仕事を与えてくれました。

ウエールズは森の民族です。

森に入ると心が癒されると信じています。

人々は森つくりに励みました。

あの荒廃したアファンの谷も豊かな森に変貌しました。

川も生き返り,サケも帰ってきました。

5%の森も60lに拡大しました。

私は「人の力により森は生き返る」このことに感動しました

私は日本が好きだ。

苦しいけれど日本を捨てられない。

日本にアファンの森を作ろう。

仲間とともの土地を買い、荒れた地に木を植え、健全な森の育て

ました。

元気な森、明るい森はは多くの動植物を育むことを知らしめよう。

水は山から、森から生まれる。

子供のとき山や川で遊んだ経験のない人は自然の大事さが分

からない。

美しい日本をつくるため子供たちをつれて山に行こう。

美しい国をつくるには森と川を大切にしましょう。

 

 

 

C.W.ニコル氏(C.W.Nicol)の略歴

1940年 英国南ウエールズ生まれ、17歳でカナダへ渡り、カナダ水産調査局北極生物研究所技官として海洋哺乳類の調査研究にたずさわる。

1967年 2年間エチオピア帝国政府野生動物保護省の猟区主任管理官に就任。 シミエン山岳国立公園を設立、公園長を務める。

1972年 カナダ水産局淡水研究所の主任技官、また環境保護局の環境問題緊急対策官として、石油、化学薬品の流出事故などの処理にあたる。

1975年 沖縄海洋博にカナダ館の副館長として来日したのをきっかけに、小説家として日本に定住。

1980年 長野県黒姫山の麓に居を定め自然とのかかわりを大切にしながら文化活動、執筆活動を居ている。

1995年 日本国籍を取得。

2002年 自ら荒れた森を購入、生態系の復活 を試みる作業を16年間行い、財団法人CWニコル、アフアンの森財団を設立。

2005年 英国エリザベス女王陛下より名誉大英勲章を賜る。

主な著書に「テキシー」「冒険家の食卓」「バーナード・リーチの日時計」(角川書店)「風を見た少年」「北極カラスの物語」「魔女の森」(講談社)「勇魚」「盟約」「遭敵艦隊」(文芸春秋)「CWニコルの人生は犬で決まる」「裸のダルシン」「森に行こう」(小学館)「誇り高き日本人でありたい」(アートデイズ)「魂のレッスン」(日本放送協会)「CWニコルの森の時間」(読売新聞)「森を継ぐもの」(KDDクリエイテブ)等多数

 

 

 

 

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